第5話

良い頃いになってきた頃…


ななみは聞きたかったことを切り出す。



「健太…なんで何も言わずに実家を出たの?」


確信ともいえる質問を切り込む。


「うーん…なんとなく?」


考える秒さえもなく、言う。


「え…?」


あっけない返答に、ななみは拍子抜けする。


「じゃ、じゃあ、なんでスマホの番号が繋がらないの?」


「あー…スマホが水没してさ、データが消えたんだ。

面倒臭かったから、新しくスマホを契約して、番号もその時変わったんだよ。」


ウーロンハイを飲みながら、健太は伏し目がちになった。


「その癖、変わらない。

嘘をつく時の癖だよね…。」


「!」


健太は目を見開く。


そして、観念したようにななみを見る。


「ななみちゃんには誤魔化せないかな…」


そう言って、一呼吸置くと



「ななみちゃん、俺は今、ホストをしてるんだ。

昔の俺とは決別したんだ。

イケてない昔の陰キャな俺の過去は全て捨ててきたんだよ。」


そう言って、少し切なそうに笑った。


「ホスト…?」


「そう。」


「そんなものになるために、スマホの番号も消したの?」


「そうだよ。

俺のダサい過去も昔の繋がりも消したかった。

だから、何も言わずに地元を離れたし、スマホの番号も消したんだ。

今は昔以上に充実しているよ?」


「そんな…私は昔の陰キャでダサいけど、優しい健太が好きだったのに…。」


「!!?」


健太の表情が強張る。


「あ…ちがっ!」


しまった!

口が滑った。


慌てて訂正しようとする。


「へえ…ななみちゃんは昔の俺の方が好きだったの?」


健太は言葉に棘がある物言いで、ななみを見る。


「今のは言葉の誤りというか…」

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