第6話

「ななみちゃん、昔さ、俺に陰キャで服装がダサいって言ったの覚えてる?」


「う…ん…。」


「ダサいって言ったのに、昔の俺のほうが好きだったの?」


ななみの発言に健太の表情は怒っている様子だった。


健太、怒ってる!?


「はー…なんか、プライドをズタズタにされた気分。」


低いトーンで言い放つ。


優しい健太はそこには居なかった。



「けんた…ご…!!!??」


謝ろうとした瞬間、手を掴まれた。


ななみは健太の突然の行動に、体をビクッと反応させた。


「ななみちゃん、今の俺は格好良くない?」


「そ、そんな事ない!

だから、手を離して…。」


「嫌だ…」


「そんな…」


「昔の俺が好きだったならさ…」


「う…。」


「じゃあ、今の俺と恋してみる?」


「え…?」


「今の俺のほうがななみちゃんも気にいると思うよ?」


「恋って何?」


「こうやって…」


健太はななみの手をギュッと握ると、恋人つなぎをする。


「ちょ…と、健太!?」


「甘いひと時を過ごすの…楽しいでしょ?」


「!??」


健太の体温が伝わってくる。


やだ…熱い…


なんで!?


お酒を飲んでるから?


それとも、目の前のこの幼馴染みに熱を上げているから?


自分でも訳が分からなくなり、混乱する。


「やっ…やだな、健太。

冗談やめてよ。」


「俺は本気だよ、ななみちゃん。」


ニッコリと笑顔で言われる。


けんた…じゃない…


別人だ…


健太はこんな事しない…


こんなチャラい真似…絶対にしない!



「私は本気にしない!」


そう言って、手を振り払い、ウーロンハイをがぶ飲みする。


もう、何杯飲んだか分からない。


健太はななみの様子を黙って見ていた。


そして、クスッと企んだような表情をしていた。


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