第36話

千佳は前のめりになり、えりの手を握った。


「なんか、えりちゃんで良かった!」


「え?」


「だってさー、黒天のトップの愛人よ!

どんな偉そうな女が来るのかと思ったら、普通の子だもの…

気が抜けちゃった。」


「私…そんなにもさかったですか?」


「吃驚するくらい、もさかったわよー。」


フフッと2人で笑う。


真広さんの彼女が千佳さんで良かった。


「ちなみにさ、激安風俗店の時給っていくらだったの?」


千佳は好奇心のまま聞く


「真広さんの話では、そのお店では、女の子を騙していて、1時間1,000円だとか…。」


「えー!ヤバいお店だねー」


「だから、真広さんには感謝しているんです。

あの時の私には神の言葉に聞こえました。」


「えりちゃん、大変だったのね…」


「あのまま行けば、激安風俗店で働いていました。」


「そっか…

結城はね…そういうお店が許せないの。

夜の世界からそういう違法なお店が無くなるように頑張っているんだ!」


千佳は胸を張って言い切った


「真広さんの目的ですか?」


「そう、結城と私の夢なんだ!

夜の世界を女の子が安心して働けるような環境にしようってね!」


立派な夢だ


えりにそんな夢はなかった


ただ、働いて、彼氏と結婚して、子供を産んで暮らす…


それが当たり前の人生だと刷り込まれていた…


「素敵な夢ですね。

応援しています!」


「ありがとう!」


一瞬の間が2人を包む。


その間を割くように…


「あれ…やっぱり、えり?」


「あ…!」


サラリーマン風の男が爽やかな笑顔でえりの目の前に立っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る