第35話

「あのさ、えりちゃん、今から言う話は気楽に聞いてもらえる?」


「勿論です。」


「結城と私は幼馴染なんだ。

小さい頃から一緒で、いつの間にかお互いが大切になっていって、自然と恋愛関係になった。」


「そうなんですね…。」


「でもさ…大人になるにつれて、人生、色んなことが起きるよね?」


えりはうんうんっと頷く。


「私は結城の全てを支えてあげてるって自信があったけど…

それは私の思い込みだったみたいね。

あの事件を未だに引きずってたのかな…。」


「事件…?」


「そっ、詳しくは聞かないでね。

私、気付いたの!

私は結城の身も心も支えてると思ったけど、そうじゃなかった。

満たされない何かが結城の心にあったのかぁー…。

その結果が、えりちゃんに繋がったのかなって…?」


えりはビックリした。


なぜ、私に繋がるんだろう…



「悔しいけどさぁー…。

私だけじゃ、無理なんだって、

いつも結城の近くに居たから分かるの。

だから…結城の支えになってあげて。

私に出来なくて、えりちゃんにしかできないこと、あると思うの。」


「私にしか出来ないこと?」


「まだ、結城に出会って間もないかもしれないけど…

結城が愛人契約したってことは、何かそこに理由があったと思うの。

あくまで、私の見解だけど。」


千佳はてへっと笑う。


「結城は黒天のトップだから、敵も多いの…

だから、私が支えられない時は、えりちゃん、お願いね。」


「私に何ができるか分かりませんが、真広さんの望みは出来る限り叶えようと思います。

それが愛人契約の条件でもあるし…」


「うん。

今はそんな感じでいいよ!」


千佳の屈託のない笑顔が印象的だった。

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