第32話

「ゆーちゃん、趣味が変わったのかしら?」


「あの…」


「ああ、ごめんねー。

私は中原賢治!中ちゃんって呼んで♪」


「中ちゃん…」


男なのか…オネエなのか分かりづらい…


「とりあえず、椅子に座って!」


ぐいっと腕を握られ、強引に椅子に座らせられる


「うーん、どうしようかしらー」


鏡越しからえりの顔をじっと見つめる


「あんたさー、髪の毛の手入れしないのね。

それに、化粧も薄すぎじゃないかしら?」


「うっ…」


確かに働いていた時はファンデーションとマスカラくらいしかしなかった。


髪の毛も一つ結びで終わっていた


手入れなんてしたこと…ない


「あまり気にしていなかったかも…」


「やっぱりー!

なんか、地味な女って感じだもの!

ゆーちゃんの愛人を名乗るなら、もうちょっと垢抜けないとー」


容赦のない言葉にえりのハートは割れそうだ


「…地味…」


もさいといわれたり、地味と言われたり、散々な評価だ


「でもー、安心して。

あんたを素敵な女にしてあげる」


そういって、中ちゃんはハサミを手にした


ザクっ!


えりの髪が切られていくー

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