第9話

何かを期待するように弾んだトーンで話す香菜子。には申し訳ないけれど。



「それはナイ。恭司は私のことなんて、ほとんど知らなかったと思うし。それにそのとき恭司には他に彼女がいたから」



「えっ!そうなの?じゃあ再会して美和のことを知って好きになったの?」



「うーーーん、たぶん・・・」




当時彼が付き合っていたのは、彼と同じ学年で読者モデルもしていた大学一の美女だった。


彼女はサークルには入っていなかったけれど、ときどき同好会の教室にも彼を迎えに来たりもしていて、すごく仲が良さそうだった。大学一の美男美女というカップルで有名だった。



いつ別れたのかは、聞いていないけど。



私は彼に想いを告げることなく、彼は卒業していった。再会までの5年間、他に付き合った人もいるけれど、心のどこかでは彼を忘れられていなかったのだと、再会したときに気付いた。

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