第22話
「貴方達はHIGH POWER社の大事な商品なのよ。
スキャンダルなんてもってのほか!!
特に、女性関係…分かりますね?」
翠蓮社長は【SPIRE】のメンバーを一瞥する。
緊張感が漂う。
「【SPIRE】は今が大事な時だから…
翠蓮社長がそこまで考えているなら、従います。」
リーダーであるアヤトは笑顔で言った。
「そう、みんな納得してくれて嬉しいわぁ♪」
「…」
勝手に進んでいく話に紗奈は頭がショートしていた。
「それで、紗奈さんには大家兼管理人だけど…それ以外にも、【SPIRE】を監視、守護していただいてもよろしいかしら?」
「は?」
「そう、紗奈は何でも張り切ってやりますから、翠蓮社長、どんどん使ってやってくださいね♪」
待て待て!
監視と守護って何⁇
広子おばあちゃんも使ってって勝手に言わないで!
「かっ、監視に守護ってなんですか?」
紗奈は顔を真っ青にして言う。
「あら、簡単よ。
【SPIRE】のメンバーが悪いことをしないか監視して、悪い奴らから、【SPIRE】を守護をするということよ」
「私の仕事じゃないです」
「賃貸契約書にも書いてあるわよ?」
「ぇえええ!?」
賃貸契約書には関係ない事が記入されていた。
しかも、すでにサインと印鑑が押してあった。広子おばあちゃんの策略か…?
「わっ、私、そんな肉体派みたいなこと出来ません!」
「そう、気負わなくていいのよ?
今のその長い髪を切ってくれたらねぇ?」
「え?髪?」
「そう、可愛いお顔をしているけど、あなたには男装して欲しいの♪」
「だっ、男装⁇」
「あらぁ、だって、大家兼管理人が女性だなんて知られたら、ファンが大騒ぎしちゃうでしょう?
【SPIRE】は今をときめく大人気アイドルグループなのよぉ!」
翠蓮社長は声高らかに笑うが、紗奈の頭からは煙がモクモクと出そうだった。
「だっ、男装なんてやったことないです
!それに、バレると思いますよ!」
「紗奈、そこはあなたの腕の見せ所よ!
NYでリキトって子のストーカーして、うまく取り入ったんでしょう?あなたなら出来るはずよ!」
「ひっ、広子おばあちゃん、何言ってるの!?
あれは、ストーカーじゃなくて追っかけだよ!」
「一緒のことじゃない?」
「全然わかってないんだから!」
「とかくも…紗奈、翠蓮社長のおっしゃる通り、髪を短くボーイッシュにしなさい」
「いや!」
「おだまり!」
広子おばあちゃんは何処からかハサミを持ってきて、紗奈の髪をひと束掴むと、容赦なく切った。
【SPIRE】のメンバー、スカイを除いて言葉を失った。
スカイはじっと紗奈を見ていた。
「あっ、そんな…広子おばあちゃん…」
「これは仕事の規則です。
後で美容室に行って整えてもらってらっしゃい」
「……はい」
長い髪を失った紗奈は傷つく。
けど、仕事だと言われると、悔しいが、仕方がない。
覚悟を決めるしかなかった。
じゃないと、推し活ができないからだ!
紗奈は体に力を込める。
「…【SPIRE】の皆さん、私がみっちり監視に守護してあげますから…覚悟して下さいね?」
もう、大迫力でいった。
「へぇ、楽しみだなぁ!
紗奈さん」
スカイはニコニコ笑顔で紗奈の前に立つ。
「スカイ!…さん…」
元カレが目の前に立った経験がないので狼狽える。
しかし、気を強く持って、手を差し出した。
「宜しくお願いしますね、スカイさん!」
「ふふっ、よろしく、紗奈さん」
スカイは楽しげに、紗奈の手を握り返した。
久しぶりに触れるスカイの手はあの頃のまま、なにも変わってなくて暖かい安心する手だった。
もう、私だけのものでは無いと紗奈は決別した。
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