第20話
スカイは柔らかい絹のような金髪の前髪をかきあげる。
5年ぶりに見るスカイは優しげな感じを与えていた顔の膨らみがなくなり、フェイスラインがシャープになって、ジェンダーレスを思わせる装いだ。
でも、紗奈に見せる表情は他人行儀な笑顔だ。
(私が見たことがない顔で笑いかけないで…
優しくて、私だけに見せていたあの頃の笑顔で笑ってよ!)
スカイのあまりの変貌ぶりに、呆気に取られて、空いた口が塞がらない。
「あれ?
そんなスカイの顔を見て…
もしかして、惚れちゃった?」
アヤトはニヤリと笑う。
「ぇ⁈」
アヤトに声をかけられてビクッと体が反応した。
「君がリキトさんの女かは知らないけど、
【SPIRE】の人気No.1のスカイにちょっかいかけようなんてしないでね?
迷惑だから!」
「そう、並な君には丁度、落ち目なリキトさんがお似合いだよ!」
アヤトとレンノスケは小馬鹿にしたようにクスクスと笑う。
「なっ、並⁇」
(昔もブスとか言われたような…
あの時はスカイが庇ってくれたよね?)
何か言い返してくれるんじゃないかって、期待をしてスカイの顔を見ていたら、ただ笑っていた。
ズキっと心が痛み出した。
「アヤト、レンノスケ、俺が普通の女に引っかかるわけがないだろ?
冗談は程々にしておけ」
「やーっぱり、そうだよね♪」
「それでこそエースだな♪」
「くだらないこと言わないで前に行け。
社長がシビレを切らすぞ」
エースであるスカイが言うと、メンバー達はリビングへと移動し始める。
スカイも移動を始めた。
スカイの顔が気になって、すれ違いざまにスカイの手を掴んだ。
「……」
スカイから離せと無言の圧力があった。
でも、そんなことはお構いなしだ。
今の空間には私とスカイしかいない。
「……あの…」
言葉を発すると、スカイから睨まれた。
「何の真似ですか?」
「なっ、なにって…なんで…っ私の前に現れたの…?」
「……何のことでしょうか?」
「とぼけないで!
あの日、一方的に別れを告げて来て...
よくも、私の前に現れたよね⁈」
「仰ってる意味が分かりませんが…
あんまり有る事無い事騒ぐと…」
グッと手を思いっきり掴まれる。
「あっ、いっ…」
紗奈は痛みに顔を歪ませる。
そして、スカイの顔がゆっくりと近づいて…
「こうやって、痛い目に遭わすよ?」
さらに力を入れられた。
「やめっ、いたっ!」
「分かったかな?」
笑顔でスカイは笑うが、その表情には優しさのかけらも無かった。
優しくて頼りになって安心できたあの表情はどこにいったんだろう?
スカイは変わってしまったのだと、そう確信した。
「離して!」
「はい」
パッと手を離されて、解放された。
手首には赤い跡が残っていた。
「昔の優しかったあなたはいないと分かりました…
初めまして、スカイさん」
紗奈は睨みながら言った。
「ぇえ、宜しくお願いします、日菜乃紗奈さん」
2人の間に辛辣な空気が流れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます