第17話
東京港区麻布周辺ー
「マップで調べたけどここのお店……?」
紗奈は看板が出ていないとても高そうなお店の前にいた。
一見さんお断りの雰囲気が醸し出されている。
「こんばんわ…」
声に出して恐る恐るお店に入って行った。
「いらっしゃいませ。
日菜乃様ですね?」
気品溢れる男性店員が声を掛けてくる。
「は、はい」
「どうぞ、こちらへ…」
流れる動作であっという間に席に案内された。
仕切りがない席に案内されると、待ち合わせしている人物が座っていた。
その人は芸能人オーラに溢れ、キラキラと周りが光っていた。
「よ!」
「こ、こんばんわっ!」
「座れよ」
「失礼します!」
席に座ると、目の前の人物は笑った。
久しぶりに見る笑顔に胸がドキドキする。
「久しぶりだな、紗奈!」
「はい!
今日は忙しいのに会って頂いてありがとうございます」
「NYで言っただろ?
高級焼肉くらい奢るってな」
「はい、実現するとは思いませんでした!」
もう注文していたのか、高級そうなお肉が次から次へと運ばれてくる。
さすが、一流アイドルは気遣いが半端なく上手い。
「紗奈が日本に帰ってきたって聞いてびっくりしたぜ」
紗奈はリキトから貰ったCDケースの中に電話番号が書いてある紙が入っていたのに気づいていたのに…。
これはリキトの電話番号と分かっていたが、連絡はしなかった。
なぜなら、あくまで、ファンと【Rush】リキトの関係でありたかったから。
「連絡するか迷ったんですが、高級焼肉が食べたかったので、連絡しました!」
「相変わらず変わったやつだな。
ほら、焼いてやるから、今日は腹いっぱい食えよ?」
半分本当で、半分嘘だ。
祖母のスパルタ教育でボロボロになったので、話を聞いて励ましてほしかった。
なんて言ったら、怒られるかな…?
「あとは、就職したので、リキトにおめでとうって言ってほしかったんです!」
「……………!」
リキトの普段の色っぽい眼差しがキョトンとまんまる目になる。
「なんだよ、その話…面白そうだからきかせろよ?」
ニヤリと挑発的で不敵な笑みを見せる。
紗奈は見たこともないリキトの表情にドギマギする。
(キャアアアアアー!
少し見ない間にリキトが更に進化してる!)
そして、紗奈は身振り手振りで半年間のことを話しだした。
1時間後ー
「あはは!紗奈、頑張ったな!
ほら、肉食え」
「ありがとうございます!」
リキトに肉を焼いてもらい、皿によそってもらう。
「あ、とろける~美味しいです!」
「まあな、ここは芸能人御用達だからな」
「幸せですぅ…」
「本当に幸せそうな顔だな」
「はい!」
紗奈は口の中をいっぱいにして満面の笑みで笑う。
その笑顔にリキトは呆れたように笑うけど、どこか幸せそうな笑みを見せた。
「紗奈、おめでとう。」
「!?」
真っ直ぐに紗奈を見つめながら言われた。
突然のリキトの言葉に、紗奈は頬を赤く染める。
「…お前、顔が赤いぜ?
大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですよっ!?」
息が止まりそうになるくらいの破壊力に紗奈の呼吸が乱れまくる。
「あー、なんか言った俺まで恥ずかしくなってきた」
「おめでとうって言うリキトがあまりにもかっこよかったから…贅沢な時間です…」
「今日のこと、忘れんなよ?」
「はい!」
「でさ、紗奈これから…」
「あ、リキトさん!!?」
紗奈の後ろで高い声がした。
リキトはその声に少し嫌そうな表情を見せた。
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