第14話
数日後、また、リキトは紗奈から差し入れを貰う。
マネージャーの湯堂には特別待遇で紗奈に接するように言ってあったので、マネージャーの湯堂がわざわざ持ってきた。
「渡しておいてくれと頼まれた」
「お、ありがとう。
レコーディング頑張るわ」
「わざわざ受け取ってやったんだ。
頑張ってもらわないと困る」
「はいよー」
「マークさんが言っていた。
30分後にレコーディングを開始するそうだ」
「分かった…」
いつものように差し入れの袋の中に手紙が入っていることを確認する。
(今日は手紙が分厚い…??)
手紙が膨れているのに違和感を抱く。
リキトはゆっくりと手紙の封を切る。
「長っ!」
文章がびっちりと書いてあった。
これをあと30分で読めるか…っと思ったけど、リキトは真剣な表情で読み始める。
〚リキトへ
ファンになって、もう随分と月日が流れました。
まさかNYでリキトと喋れるようになるなんて思いませんでした。
【Rush】の曲に出会って人生が楽しくなったなぁ…
実は、数年前に私はお付き合いしていた人に、アイドル好きとバレたくなくて秘密にしていました。
その方は人気者で、とてもモテていました。
そして、笑った顔がリキトに似ていました。
でも、私は彼氏よりリキトを優先していた。だって、私の生きるパワーだから。
彼氏を放置して、リキト優先でライブにむけて活動していた時期もありました。
でも、ある日バレて、リキトのことも全否定されて、最終的にはお別れを告げられました。
今では、あの日、すべてを打ち明けて、私の好きなことを受け入れてもらえるように話をしていたら、
リキトのことも否定されずに済んだのかと思います。
ファンなら、リキトのこと受け入れてもらえるように言うべきだった…
振られてから、周りの人の態度が180度変わって、誹謗中傷が止まらなかった。
傷ついた私の心にはリキトの歌と笑顔が支えだったんです。
あなたは素敵なものをたくさん持っています。
これからも、いちファンとして応援させてくださいーー〛
「あいつも振られたことがあるのか…」
リキトの瞳は少し潤んでいた。
アイドルのハスナから連絡もなく音信不通で挙げ句の果てにはネットニュースで新恋人の存在を知る始末…振られたも同然…
傷つかないわけがなかった。
「日菜乃紗奈…初めてあいつの本名知ったな…」
リキトは力を込める。
そして、発声練習を始めた。
周りのメンバーはビックリした。
「リキト、張り切ってるね!」
バンビは驚いたように言う。
「まあな!
いい曲創れるように頑張んないとな」
「誰に向けて?」
「今まで支えてくれた全ての人に…だな…」
「ええー」
バンビは目を丸くする。
ライトは開いた口が塞がらない。
リキトの変わりように後藤マッシュは目を輝かせる。
「なんや、テンション上がんねんや!」
Xはニコニコとしていた。
今日のメンバーはリキトを筆頭に熱の入れようが違った。
レコーディングが始まった。
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