第13話

「…アッハッハ!」


紗奈は人一倍笑う。

リキトはびっくりする。


「私とリキトが?

リキト、疲れているんですか?」


カフェラテをリキトに渡す。


「疲れてねーよ」

「だとしたら、ギャグですか?」

「ギャグでもねー」

「はあ…からかうのはやめてください。

私は付き合う事に興味がないですし…ましてや、人気者が苦手なんです。」

「どういうことだよ」

「言葉のとおりです。

それに、私にとってリキトとは神様です。

神様と付き合う人がどこにいますか?」

「かみさま…?」


よく分からない持論にリキトは首を傾げる。


「日本人がいなくて寂しいのなら、いつでも話し相手になりますので」


紗奈はニコリと笑う。

リキトはゆるーく断られたのを感じた。


「そうか、今の言葉は忘れろ。

俺も、失恋して気が動転したのかもな」

「…きっと、そうです。」

「つか、俺に彼女がいたのに驚かねーの?」

「…彼女の1人くらい、皆さん居るでしょう?」

「…ふっ、変わったやつだな、お前」


リキトは微笑する。


(あ…あの時の…あの人の笑った顔に似てる…)


ふと、懐かしい感情が湧き上がってきた。


ぼーっとしていると、リキトに頬を叩かれた。


「おい、大丈夫か?」

「あ、はい、だ、あ…大丈夫です」


しどろもどろになりながら答えるので、リキトは不審がる。


「ま、お前もなんかあったなら話し聞くからな」

「はい、レコーディング頑張ってください」

「おー、また来るな」


ヒラヒラと手を振りながらリキトは去った。


「…危なかった…」


嫌な記憶に封印をしていたのに…

彼を思い出すところだった…

彼の笑顔が…

私の心を抉る。

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