第11話

今年は桜の開花がとても早くて、物事も早々に過ぎ去りそうな予感を感じていた。

私はスカイに呼び出された。

桜が舞う中、スカイは桜の木を眺めていた。

リキトに似ていて美しくて…でも、どこか儚げで…切なかった。


「こんなところに呼び出してどうしたの…?」


スカイの顔がゆっくりとこちらに向く。


「紗奈…」

「……ん」


紗奈は名前を呼ばれて頷く。


「別れて」


スカイは笑顔でハッキリと言った。

紗奈はショックで目を見開く。


「え…な、なんで?」


震える声で聞く。


「俺は一人前のアイドルになる」

「あ、アイドル!?」

「そう、だから、紗奈とはお別れ」

「突然、何言って!

や、やだ!」

「やだって…言われても…

もう、オーディションに申し込んだんだ」

「は?」

「俺、日本を離れるんだ」

「日本を…?…え?」

「だから、紗奈ともお別れだね」

「嫌だ!絶対別れない!」

「紗奈…もう、紗奈のことは好きじゃない…

だから、終わりにしようよ…それに、しつこい人は嫌いかな」

「え?」

「だから、しつこい人は嫌い」

「ス…カイ…」


紗奈の瞳から涙がこぼれ始める。

それをスカイはただただ笑顔で見ていた。


「紗奈、今までありがとう」


手を差し出してきた。

握手のつもりだろうか…


私は…

その場から走り去った。


(大っきらい! 

 大っきらい!)


スカイの最後の言葉を振り払った。





その後ー

スカイは学校から姿を消して、行方がわからなくなった。

スカイに振られたことは学校中に広まった。

誰がそんな事を広めたのか分からなかった…


そして、女子にはバカにされ、ざまあみろと罵られた。

なんの取り柄もない女がみんなのアイドルに手を出したからだと悪態をつかれた。


わたしはそんな生活に疲れ果てた。

高校を卒業して、逃げるように日本を離れてアメリカに逃げ込んだ。

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