第8話

「わー、マジイケメンだね!!」

「リキト2号や」

「俺、2号とかやめろ」

「なんや、ホンマに似てんねん!」

「ハハッ!」

「君、お名前は?」


バンビがステージ上に上がった男の子に向かってマイクを向ける。


「スカイです」


スカイは爽やかな笑みで受け答えをする。

バンビとスカイは会話を続けていく。


「へー、スカイ君、格好良い名前だね!!」

「ありがとうございます」

「今日は誰と来たの?」

「実は…今日は1人で来たんです!」


スカイは恥ずかしそうに照れ笑いする。


「えっ!1人で!?」


バンビはびっくりする。


「別に1人でもええやろ!

な、みんなー?」


Xは観客に問う。

すると、悲鳴にも似た歓声が上がる。


「ハハ、みんな同意やってー!」

「こんなにカッコいい男の子がライブに来てくれるなんて嬉しいね」


バンビは男性人気も得たのが嬉しかったのか、笑顔が溢れ出ていた。


「リキトが病欠した時はスカイ君に代わりに来てもらう?」


ライトはスカイより身長が高いので、自然とスカイを見下ろしてしまう。

ライトはスカイの顎に手を伸ばす。そして、細い白い手でスカイの顎を熱っぽく触る。

そのさまは禁断のボーイズラブを思わせるようで、倒れそうになる女性が多発した。



(ななな、何が起きているの!?彼氏が【Rush】のライブに何故かいて、

何故かステージ上に立っていて、メンバーと会話して、ライトに顎を触られている!!?

突然のボーイズラブって…これは、夢!?)


情報量が多すぎて、紗奈の頭が追いつかない。


「実は…」


スカイは伏し目がちに言う。


「どうしたの?」


ライトは目を細めてスカイの言葉を待つ。


「今日のために、とある女性を誘ったんですが、断われてしまったんです」


憂いを帯びた目でスカイは言った。

その瞳は、その周りや観客をぐっと惹きつけるには十分すぎた。


「「「えええ~!?」」」

【Rush】のメンバーは一斉に声を上げた。


「彼女は…リキトさんの大ファンなんです。

ライブのアリーナ前列が当たったので、彼女が喜んでくれると思ったからお誘いしたんですが…

断われたんです」


同情を引く言い方と所作で【Rush】のメンバーや観客はスカイの言う言葉にいちいち過剰に反応し、大げさに反応をしめす。


「スカイ君の誘いを断ったんか?」


Xは半ギレで言う。


「ありえないね!

しかも、こんなに優しくてカッコいい彼がせっかく誘ってくれたのに!」


バンビの綺麗は顔が少し怒りによって歪む。


「彼女ー、聞いてるかー?

こんなに、カッコいい男の子の誘いを断るなんて、頭狂ったー?

俺のファンなら、一緒に見に来いよ!

な、だろ、みんなー?」


リキトは観客に向かってマイクを向ける。


「「「その通りー!サイテー!」」」


(…………私、リキトに責められてるの!?)


紗奈の顔面はもう、蒼白だった。

足が震えてくるし、頭がくらくらして、立っていられない。


「つか、この場にいるわけないから、言っても意味ないよね?」


後藤マッシュが冷静に言う。


「…確かに、だなー!

あははー」


リキトは笑うが、紗奈は全く笑えない。


「リキ…ト…」


紗奈はリキトに裏切られたような気に陥る。


霞んでいく瞳でステージ上を見ると…


スカイと目線があったような気がして…


「…あっ…!?」


スカイはとある一点を見つめてフフッと微笑んだ。


確実に私の存在を認識している。


(なんで、こんなことをスカイはするの?

ワカラナイ…)


「リキトさん、今日でリキトさんの事をもっと好きになりました。

帰ったら、彼女に自慢しようと思います」


スカイはリキトの方を向き、笑顔で握手を求めた。


「そっかー、なら、もっと自慢できるようにしようか?」


「え…あっ?」


スカイの手をリキトが掴み取り、己の方に引き寄せると、そのまま抱き締めてしまった。



「「キャアアアアアー!!」」


会場から悲鳴が響く。


「スカイ君、君って俺にXXXXXXXXよね?」

「そうですよ。だから、リキトさん…XXXXXXXXXXXXXから、待っててくださいね」

「…………スカイ君、意外とXXXXXXX。」


2人はコソコソと耳打ちし合う。

そして、一瞬目があったところ、笑顔で笑いあった。



「スカイ君、今日は有難う。

残りのライブも楽しんでね」

バンビは手を振った。


「はい、貴重な体験をありがとうございました」


スカイはメンバーに一礼をしてから、スタッフに誘導されて、ステージから降りた。


「彼女によろしくね」

「MC長くなったけど、まだまだいくぞー!」


ライブは続くが、紗奈は汗がダラダラ止まらなかった。

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