第4話
こうして、付き合うことになったけれど、夏休み中は勉強に集中していて、恋愛どころではなかった。
私が落第するのを防ぐ為に、スカイも真剣に教えてくれた。
そして、夏休み最後の日…
図書室でスカイが私を待ってくれていた。
「テストの結果出た?」
「うん…
………っ
85点‼︎」
テスト用紙をスカイに見せると、スカイも満足そうに笑った。
落第は逃れました。
「よしっ‼︎
頑張ったね」
「ありがとう、スカイが教えてくれたからだよ!」
「俺はただ教えただけ。
教えてもらった事を学んでテストで結果を出したのは紗奈の力。」
「ありがとう…まさか、こんなに点数が上がるなんて思ってもみなかった。
本当に有難う…有難う、スカイ!」
「あ…うん、そんなに何回もお礼を言われると照れるね」
困ったように、だけど嬉しい表情が隠しきれずにスカイが笑うものだから、私の心はドキドキとまらない。
その笑顔にとっても弱いの…
あ、っと手を叩くと、通学カバンからある物を取り出す。
「その…今まででのお礼…
クッキーを焼いたの!」
可愛いお花模様の袋に入ったクッキーをスカイに手渡す。
「えっ…
俺の為に作ったの?」
「うん!あっ、もしかして、甘い物食べなかった?」
「…ありがとう!
紗奈からの手作りとか嬉しすぎ…」
大事そうにクッキーを受け取ると、クッキーを一つ手にする。
そして、口に含む。
サクッとなんともリズムが良い音が鳴る。
バターが効いていてとっても濃厚なクッキーだった。
「今までで食べた中で一番美味しいよ
ありがとう、後でゆっくり食べるね」
「良かった…スカイ…
ありがとう…ね」
ここまでの辛い日々を乗り越えたのがスカイと一緒で良かった。
泣きそうになるのを堪えていると、スカイがそっと私の手を取った。
そして、安心させるように手のひらで私の手を包み込むと、目線を私に合わせる。
「もうすぐ新学期が始まるね。
昼休みも一緒に居たいし、紗奈と放課後にデートもしてみたいな」
そう言って、目を細めて笑うスカイに私はとてつもなく安心感を持ってしまった。
「…っ…私もスカイと一緒に居たい!
いろんなスカイを見たいな!」
「!!?」
明るい声で言うと、スカイは少しびっくりとした表情をする。
ちょっと、驚かせすぎたのかな?
恐る恐る表情を伺うと、スカイは急に笑い出した。
「ははっ!
さっきまで、泣きそうだったのに…
紗奈は本当に…くくっ…」
「ス…スカイ!?」
「うん、紗奈のそういうところが良くて好きになったんだよね」
「え?」
「俺のほうがいろんな紗奈を見たい」
そういって目をじっと見られる…
スカイの目は潤んでいて、この後、起こるであろう展開が分かった。
「っぁ…」
小さな声を出したすぐ後にはスカイの唇が自分の唇と重なっていた。
優しくて…
暖かいキス…
こうして、新学期は過ぎていき…
冬になる頃…
ちょっとした噂が校内を駆け巡る。
「1年のマドンナの桃ちゃんが倉元スカイに告ったら振られた!?」
「嘘…」
「もう彼女が居るからって断られたらしいよ?」
「彼女って…誰?
2年の先輩?」
「それが謎だよねー
マドンナが振られたら、他に倉元君に釣り合う人が居ないよね!?」
クラスの人達が噂話で盛り上がっていた。
それを、私はただ黙って見守っていた。
交際は内緒…
けど…
「2年の先輩たちが倉元君の彼女探しに躍起になってるらしいよ…」
「探してどうするんだろうね?
別れろって言うのかな?
怖いねー…
そんなことしても、倉元君と付き合えないのにぃー」
「そういえば、今日は2組の山田さんが先輩たちに呼び出されてるって~」
他人事のように話す。
きっかけはマドンナの桃って子がスカイに告白してから、振られた腹いせに、彼女がいることを言いふらしたから…
それから、みんなのアイドル的存在のスカイを奪った女として、吊るし上げようと、先輩達や1年の女子はスカイの彼女探しに躍起になっている…
そう、モテる人と付き合うのはそれなりの代償が必要だった。
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