Vol.4/VS.日本刀(3)

「くそっ! ちょこまかと!」


 自在に刀をあやつりながら、男が吠えた。経験者なのは明白だった。有段者かもしれない。避けるたびに空を切る、刀の音がわっかない。あ、間違えた。おっかない。


「逃げるな! 勝負しろ!」


 そう怒鳴る男に、オレも怒鳴り返した。


「勝負!? 勝負だったら、あんたの負けだぜ!」


「何いっ!」


「何故なら……勝つ気があるなら、何で鞘を捨てた!?」


「み、宮本武蔵やってんじゃねぇ!」


 こんな危機的状況でも、ついつい軽口を叩いてしまうのがオレの悪い癖だった。余計、相手を怒らせてしまうのだ。


 誓っていうがワザとじゃない。勝手に口がしゃべるのだ。


 どうやら、本気で怒らせてしまったようだった。怒りで、刀の速さが倍加されていた。


 と、その時。


 空白エアポケットのような、一瞬が生じた。


 だがそれは、長い時間にも感じられた。


 しまった、と思った。


 男の笑みが、はっきりと見えた。


 オレの隙を見定めた、会心の笑みだった。


「貰った!」


 時が戻った。


 同時に刀が上段から振り落ちてきた!

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