Vol.4/VS.日本刀(2)

「!」


 後ろに跳びのき、オレは間合いを取った。


 着ていたTシャツを見ると、プリントされた再結成セックス・ピストルズのジョニー・ロットン(=ジョン・ライドン)が、斜めに切りさげられていた。


「銃で駄目なら刀はどうだ! 平気かどうか試してやる!」


 素直に試させてやるほど、お人好しではなかった。刃物のなかでも日本刀ほど、切れ味がすごいのは他にないのだ。ナイフみたいにやりすごせる自信はなかった。


 でも、実際のところはどうなのか、実は興味がなくもなかった。


 切られても、切断まではいかないのか。それとも、スパッといっちゃうのか。切断されたらされたで、つければすぐに繋がるのか。はたまた、別の新しいのが生えるのか。


 ニョキニョキと。


 ぶったぎられた肩先から、タコが触手を再生するように、新しい腕が生えてくるさまが脳裏に浮かんだ。


 ちなみにタコは切れた触手がそっくりそのまま、もとのかたちで再生されるとは限らないそうだ。一本の断面から複数本、枝分かれして生えてくる場合があり、ある事例では総計九十六本もの触手を持ったタコが、できあがったこともあったという。


 九十六本の腕をぶらさげたオレの姿が、すうっと頭をよぎった。


 試す勇気は、ちょっとなかった。


 で、オレは避けに避けた。

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