Vol.4/VS.日本刀(1)

「手を引いたんじゃなかったのか?」


 携帯をポケットに戻しながら、オレから声をかけた。


「そのつもりだったんだがな」


 鋭い眼つきのまま、男が答えた。


「しがらみが、いろいろな。駄目だったよ」


「契約解除は認められません、ってか?」


「ま、そういうこった」


 面白くなさそうに、男はいった。


 《ヤクザの兄貴》だった。


「で、どうする気だ? まさかその、何だか物騒そうなヤツをここで振りまわすつもりか?」


 オレの眼は、男が持っている長物に移っていた。


 それは、どう見ても日本刀だった。


 手慣れたふうに鯉口を切ると、男は鞘から引き抜いた。刀身が、光でぎらりと反射した。


「お、おい……ちと、時と場所ってのを考えたほうが……」


「そうもいっては……いられなくてな!」


 鞘を投げ捨て、切りこんできた!

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