Vol.2/デッド・ソウルズ(7)

「誰に!? 何故!?」


「知らねぇよ!」


「いいから、いえよ!」


「本当だ! 兄貴にいわれただけなんだ!」


 嘘をついているふうではなかった。こいつのいう《兄貴》とやらが、すべての黒幕なのか?


「じゃ、その《兄貴》のとこに連れてけよ」


「ムリだ!」


 なかなか頷かない短髪にいうことを聞かせるには、かなり根気が必要だった。


     ※


 短髪の右腕を後ろに捩じあげながら、深夜のひとけのない川口の路地裏を歩いていた。


 雨で濡れた身体が不快で熱いシャワーでも浴びたいところだったが、そういうわけにもいかなかった。機を逸してしまうおそれがあったからだ。


 夜明けはまだまだ先だったが、あれだけやみそうもなかった雨はもうあがっていた。


 なるほど。


 やまない雨はないってことか。

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