第58話

みんなの視線が一斉に夕夏のほうへ向く。




「夕夏……本当……?」




急に弱々しい声になった沙希。



否定してほしいという願いがあったんだと思う。




「まあ、そうね。本を返しに行った時は杏奈も河北さんもカウンターにいたけどね。その後の事は知らないわ」




夕夏らしい、嘘はつかないけれど疑いを持たせるような答え。



沙希はなぜか、勝ち誇ったような顔でこちらを向いた。




「ほら!夕夏は証人にはならないじゃない?」



「あら?私たちより夕夏のほうが怪しいと思わないの?夕夏が図書室を出たのは、篤子の悲鳴が聞こえてくる少し前なのよ?」




河北さんの淡々とした口調は、ブレがなく、正当な意見に聞こえてくる。



クラスメイト達がヒソヒソと話し始めた。

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