第56話

篤子が落ちた階段は管理棟にあり、音楽室や図書室などに用事がない限りは絶対に行かない場所。



クラス中をにらんでいた沙希と私の目があった。



ヤバい……。



慌ててそらしたけれど、遅かった。



沙希はツカツカと私の元に歩み寄ってきて、胸倉をつかんだ。




「ねえ、あんた。昨日、篤子に嫌なこと言われてたよね?その仕返しに篤子を呼び出して突き落したんじゃないの?」



「私、そんなことしてない……っ!」




ノートに書かれていた通りに話が進んでいる。



昨日からわかってはいたけれど、直面したらどう答えていいかわからない。




「あの階段は図書室に近い場所にあるじゃない?!」



「だけど、私はずっと図書室で作業してたもの!」




どれだけ本当のことを言っても、ウソみたく聞こえる。



この状況でみんなが信じるのは沙希のほうだろう。

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