第34話

顔を上げると、彼女は首をかしげて私の様子をうかがっていた。



エアコンがきいていて涼しいはずなのに、私の額にはじっとりと汗が浮かんでいるのがわかった。




「あのね……」




河北さんに話そうとしたけれど、私は口をつぐんだ。



だって、話したところで信じてもらえそうにない。



でも、話すならノートの存在を知っている河北さんだと思うし……。





「し、信じてもらえないかもしれないけど……っ!」




私の声は震えていた。



だけど、必死に話す私を見て、哀れに思ったのか、河北さんはずっと黙って話を聞いてくれた。




話し終えると、私はカバンから真っ黒ノートを取り出し、カウンターの上に置く。





昼間、明るいところで見てもやっぱり気味の悪さは変わらない。

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