第9話

それは本というより、ノートだった。



表紙には何も書かれていない、ただの真っ黒いノート。



意図的に入れたとか最初は思ったけれど、もしかして図鑑で調べ物をしていた誰かが、図鑑と一緒に入れちゃったとか……?



だけど、そのノートにはどこにも名前がない。



中を見たら、何かわかるかもしれない。





ノートを開こうとした時、背後から視線を感じた。





誰かが図書室に入ってきたのなら、ドアの音で気づくはず。



図書室のドアは、開け閉めするたびにギギッというかなり大きな音がするから。



だから、この視線は図書室に入ってきた誰かのものではなく、確実に河北さんのものだ。




「河北さ……」




迷うことなく彼女の名を口にして振り返った。





だけど、そこにいたのは、髪の長い青白い顔の女子生徒だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る