第2話 情報屋とは…?


――僕は今、とても大きく混乱している。

 一気に色んなことが頭に流れ込んできたためだ。

 

 目を覚ますと周りは草原、今の時代に珍しいような建物に、大剣を持った男の人。

 それに魔獣の急増…。


 何かがおかしい予感がする。

 まるで世界が"生まれ変わった"ような…。


 まあ、今はそんなこと考えている暇は無い。

 聞きたいことがたくさんある。

 その魔獣?とやらのことも聞きたいからね。


 とりあえず、その魔獣?とやらの話を深堀してみようかな。

「その…魔獣ってなんですか…?」

「……お前さん魔獣も知らないなんて、どれだけ世間知らずなんだ…?」

 え?そこまで言うレベル??

 ここでは魔獣ってそんなに有名な話なの…??

 

「魔獣ってのはな…マナに蝕まれたやつらのことだ…

 この先、生きていくために必要な知識だぞ…?」

 そこまで必要なの…!?

 とりあえず、マナ?というものに蝕まれると魔獣になってしまうらしい…

 それが大量発生しているっていうわけか。

「魔獣が大量発生しているおかげで、騎士団としてもいい迷惑さ…」

「魔獣ってのはその…危ないんですかね…?」

「とんでもない。蝕まれたやつらは全員、もともとの理性を失うんだ……肉体的には死んじゃいない。

 だけど、中身は全く別の化け物の完成って訳さ」

 なるほど…もともとの理性、中身の魂的なものは失われるのか。

 だけど、そんな物騒な話がリアルにあるもんなんだな。

 

「見た目も全く変化が無いわけじゃない。

 色んな症状が出るが、特に多いのは"目や背中"辺りに異変が出ることだ」

 見た目にも大きく影響するようだ。翼とか生えてくるのかな…。まあ、なわけないか。(笑)

「その魔獣から誰かに移ったりするんですか…?」

「もちろん。魔獣の体組織を取り込んでしまったら、徐々に蝕まれていく。特に、魔獣の血液などが傷口などに触れちまったら終わりだな…」

 移っちゃうのか…怖いな…。

 とりあえず魔獣を見つけたら逃げるしかないな。

 

 正直、この魔獣ってのもあまり受け入れられないけど、慣れていくためには仕方ない。

 

 ――僕は少しづつ勘づいている。ここはもともとの世界と違う。なにか別の世界なのかもしれない。と。


 とりあえず、もっと情報を集めたいしお金も何も持っていないので、いろんな人が集まる場所に行かなくちゃ。

「その…いろいろ教えてくださって、ありがとうございました…」

「おう、お前さんも気をつけてな」

 と言って彼と別れると僕は、街の中へと一歩ずつ入っていった…。



――街は大勢の人で賑わっている。

 色んな店が並んでいて、たくさんの人がやり取りをしている。

 だけど、1番に目に付いたのは髪の色などの見た目の部分だ。

 黒髪がとても少なく見えるレベルで、いろんな色の人がいる。

 服装なども現代とは違う。

 スーツやジャージ?全くいない。

 まあ、ここまで来るとだいたい予想はついていた。

 

 僕が今持っている"普通"は通用しない。

 

 まあそれは置いておいて、まだまだ調べなければならないことがたくさんあるので、他の人に話しかけつつも街を歩いてみることにした。


 歩いていると、またまた気づいたことがある。

「文字が圧倒的に日本語だな…」

 そう。文字が日本語のままだったのだ。

 ちょくちょく英語やらなんやらが混じっているが、殆どは日本語。

 世界は違っても言語は一緒なのかな?


 まあ今の僕からしたらとても好都合だ。

 全く読めない文字だったら、相当困っていただろうし。

 なによりも、他の人とのコミュニケーションが取りやすい。

 それが一番ありがたいことだ。


 そうして僕は歩いていると、一つだけやけに目に止まる看板を見つけた。


「情報屋ジーニウス…?」

めちゃくちゃ珍しい看板だな…。

 情報屋なんて今どき聞かないもんだから、余計に目に留まる。

 スマホさえあれば情報なんてすぐに手に入るから、情報屋なんて職業すらないからな。


 まあ、今の僕にはピッタリだ。ちょっと入ってみよう。

 だけど……とても入りずらいな。

 木製のがっちりとした扉で、中はちょっと暗そうだ。

 閉まってそうな雰囲気だが、しっかりと営業中と扉に掛けられている。


 どうしようか…。そう迷いながらも僕は、恐る恐る扉を開けてみることにした。


 扉はとても重厚そうに見えるが、思ったよりは軽く開けやすい。

 

「失礼します……」

 あまりにも怖すぎてなぜか"失礼します"と息を吐くように小さな声で言ってしまった。

 

 入ってみると中は明かりが少しだけ付いていて、いろいろな物が置いている。

 情報屋ってよりは、物置と言った方が似合いそうだが…。

 中には鎧のようなものや、刃物がずらっと並んでいたり。いかにもな雰囲気だ。


 ちょっと歩いた奥にカウンターらしきものがある。

「本当にここは情報屋なのか…??」

 できるなら早くここを出たいところだ。

 必要な情報だけ聞いてここを出よう。


 だけど…カウンターに誰もいないな。

「あの…誰かいませんか〜…」


「……」

 反応がない。

 まさか本当に閉まっているのだろうか。

 一応、営業中とは掛けられていたのだが。


「すいませーーーん!!本当に誰もいないんですかー!!!」

 そう大きな声で呼ぶと――


「誰だァ!!人の眠りの邪魔する奴ァ!!」

 (?!)

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい?!?!」

 怖すぎ?!?!

 ガタイの良い白髪の男性が、奥から飛び出してきたのだ。


 心臓が飛び出るかと思った。

 僕の鼓動は最高潮だ。

 心拍数は200を超えているかもしれない。


「あ……あの……その……」

「んん……?お客さんか……?」

「そ……そうです……情報屋って書いてあったので……」

「あ、そうかそうか!悪ぃ悪ぃ!寝てたもんだからつい、怒鳴っちまったぜ!」

 悪すぎでしょ?!?!

 呼んだ瞬間にあんな大きな声出されたら、こっちもたまったもんじゃないわ?!

 クチコミだったら星1になるレベルだわ?!


「その……情報を聞きたいのですが……」

「ああ!何でも聞いていいぞ!その代わり……お代は弾むぜ…??」

 ん??お金がいる…??

 

「お代ってやっぱり……お金ですか……ね?」

「もちろん!お金はきっちり頂くぜ?」

 やっぱりそうだよな。だって情報だし、商売なのだから当然だろう。

 

「その……お代って何円ですかね…?」

「円…?なんだそりゃ…??」

 あれ…?円じゃないの…??

 円以外無いよ…??

 今まで円を使って生きてきたよ…??


「え……お金ってどんなのですかね…?」

 お金ってどんなのって、僕めちゃくちゃな質問してない?!

 普通の人だったら聞かないよね??お金ってなんですか?ってさ?!

 だけど…本当のことだ……。

 多分…この世界と日本じゃお金の単位そして、形までもが違うのだろう。

 外国だってそうだ。日本とアメリカじゃ円とドルで違う。そんなもんだろう。


「お前さん……外国のもんだよな…??」

「え……えぇそうなんです……」

 そう思われても仕方ない。ここまで無知だったら外国のものと思われてもおかしくないだろう。


「仕方ねぇな…今回は特別に教えてやるよ……ここはまず、最西端の都市リファエルだな。それはわかるか?」

「え……えぇ、それはさっき別の人に教えてもらいました……」

「おう、なら、今いるこの国は分かるよな……?」


 ごめんなさい。無知なんです。

 そう心でぎゅっと思いながら、僕は

「わからないです……」

 とボソボソとした声で呟いた。


「はあ……お前さん一体どこから来た奴だ…??」

 日本から来ました。なんて言っても伝わらないよね。

 こっちの世界では恐らく、日本なんて国は存在しないだろう。

 んー…なんて言おうかな。

「あはは……ちょっと遠い田舎から来たんです……」

「田舎……?まあいい、ここはヴァルヘイム王国の最西端だ」

 なるほど…。ここはヴァルヘイム王国の最西端の都市、リファエルということだな。

 ここまでは理解した。


「なるほど……ヴァルヘイム王国…… ちなみに…この国のお金の単位ってなんですかね…?」

「ヴァルヘイムではメラフしか使えないな……お前さんの円?とやらはここでは使えないぜ」

 なるほど…メラフというのか。さすがにお金までは共通してないか…。

 さすがにもし共通していたら、あまりにも都合が良すぎる感じはするよな…。

 さすがにそこまでは都合良くいくわけないか。


 とりあえず円は使えないので、メラフとやらを手に入れなければ何も出来ないな。

 宿や道具がどうしても必要になるし、今僕は服しかないようなものだし……。同じ服を着続ける訳にも行かないしね。



 とりあえずお金を手に入れて、生活をする所から始めよう…。

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