第1話 異世界の予感…?!


 ――僕はどれくらい意識を失っているのだろうか。


 もう既に死んでいるかもしれない。

 あんなところで倒れてしまっては誰も見つけてくれずに、そのまま死んでしまう。


 どうしよう。

 誰か見つけてくれないかな。


 もしかしたら、誰かが救急車を呼んでくれて、今頃僕は病院に搬送されている可能性もある。

 

 そうだといいんだけどな。


 もし僕が既に死んでいるとしたら、僕はこれからどうなってしまうのだろう。

 ずっとこの暗い世界で独り言を考えるのかな。


 そんなことを考えていると、ふと一筋の光が見えた気がする。

 (?!)

 (今のはなんだ……?)

 少しだけだったけど、光が見えた。

 一命を取り留めたのかもしれない。


 すると、またしても光が差した。

 しかも、だんだんと感覚を取り戻してきたように感じる。


 一命は取り留めたようだ。

 救急車を呼んでくれた方、本当にありがたい。

 感謝しても感謝しきれないくらいだ。

 意識が戻り、動けるようになったら、ぜひお礼をしたい。

 

 だんだんと、まぶたの感覚が感じられる。

 力を入れる感覚が戻ってきた。


 さぁ、まぶたを開けようか。

 いつまでもこんな薄暗い中で独り言を考えていられないからね。


 そうして、僕は少し重いまぶたを力を振り絞って開けた。


 まぶたを開けて1番に目に飛び込んだのは、圧倒的な光。

 とてつもなく強い光が僕の目に差し込んだ。

 僕は思わず、眉間に皺を寄せた。


 だんだんと手の感覚も感じられてきたので、地面を手探りで触ってみた。


 だけど、何かがおかしい。

 さっきまで僕は舗装路を歩いていたはず。

 だけど、手にあたる感触はどうも土っぽい。

 病院に運ばれたとしても土なんて感触は感じないだろう。

 どこか別のところに運ばれた?

 人が倒れている状況で救急車を呼ばない方が常識的におかしい。

 可能性はかなり少ないと考えられる。


 そろそろ足も動かせそうだ。

 そうして僕は、倦怠感などに襲われながらも立ち上がり、まぶたを開けて周りを見渡してみた。


 その瞬間僕は息を飲んだ。


 倒れていたはずの舗装路が

 見覚えのない草っ原に変わっていたのだ。


「え……なっ……なに……ここ……」

 

 僕は混乱を隠しきれず、愕然としていた。


 何も分からない。

 倒れて起きたら周りは草っ原に変わっていた?

 そんなことあるはずがない。


 だけど、僕の目の前にはその"あるはずがない"光景が広がっている。


 もっと周りを見渡してみると、何やら城壁のようなものが見える。

 こんな技術が進歩した現代の日本に城壁は時代遅れすぎる。


 僕には理解が追いつかない。


 とりあえず気持ちを整理しよう。

 僕は学校から帰る途中に路上で倒れたはず。

 そこからしばらく気を失っていて、目を覚ましたらここにいた。


 僕はなぜここにいる?


 僕が倒れている間に何が起きた?


 とりあえずここら辺を探索するしかない。

 日本にこんな場所があるのだろうか?

 日本と言うよりは、西洋という感じがする。

 明らか日本にはないような場所だ。


 とりあえず遠くに見える城壁のようなものに向かって歩いてみる。

 道は舗装されておらず、草の生えていない土や砂が道として続いているだけだ。

 周りに通行人は全然見当たらない。

 それだけでも日本とは思えないような場所だ。


「本当にどこなんだ…ここ…」

 

 と、ぼそぼそ呟きながらも僕は城壁のようなものに向かって歩く。

 だんだんと城壁のようなものが近づいてくる。


 だが、その様子も何かおかしい。

 城壁の内側には何やら建物のようなものが建っているみたいだ。

 しかも中に人がいて、動いているように見える。

 この現代において、城壁などを現役で使うところなんて、そうありはしない。


 この景色からして日本ではないだろう。

 だとすると、どうやって外国に移動させたのだろうか?

 寝たきり状態の人を飛行機や船に乗せて移動させ、そこら中に捨てる?

 なかなかありえない話だ。


 だけど今は"あるはずがない"ことが実際に起きている。

 なので、断言はできない状況だ。


 そうしているうちに城壁のようなものの近くまでやってきた。

 目の前には、石造りの高さ50mはありそうな大きい壁と、その壁の中に城門のようなものがそびえ立っている。

 こんな大きい西洋建築は初めて見たな。

 ネットなどで見たことはあったが、いざ目の前にしてみるとインパクトがとても大きい。


 そんなことを考えていると、城門の中から人が出てきた。

 黒髪で少し屈強な体つきの男性のようだが、少し様子が変だ。

 見慣れないような服装をしていて、なおかつ背中には大きな剣らしきものを背負っている。

 今の時代にこんな物騒な格好しないし、剣を使うところも珍しい。

 今の主流は銃器などだろう。

 

 と、考えつつもこの状況だと、話しかけて情報を得るのが最適解だろう。

 だが、話しかける勇気が出ない。

 どこの誰かも分からない武装した人に近づいて話しかけるのはリスクがある。

 いきなり斬られても正直おかしくない。

 

 いや、今はとりあえず情報を集めるのが先だ。

 とりあえず勇気を出して話しかけてみるしかない。


 そうして僕は、彼に近づいて、

「あ、あの…」

 と、小さなボソボソとした声で話しかけてみた。


「ん?どうした?」

 と、見た目相応の堂々とした重い返事が返ってきた。

 とりあえずここはどこか知りたいので、真っ先に質問してみようかな。


「あの…ここって…その…どこですかね…?」

 ダメだ。全く言葉が出ない。

「どこって…」

 相手もとても困っている様子だ。

 こういう時にコミュ力の無さが身に染みるな。


「ここは最西端の都市、リファエルだが…ここの地名が分からないなんて、ずいぶん遠くから来たお客さんのようだな?」

「え…えぇ、そうなんです」

「お前さんも運が悪いこったな…」

 運が悪い?どういうことだろう。

 何か不運なことでも起きているのだろうか?

 

 「最近ここらで魔獣が急増しているらしくてな、俺ら騎士団も対応に困っている最中なんだ……お前さんも気をつけろよ。魔獣に襲われたらひとたまりもないぜ……」


 え?

 魔獣??なにそれ。

 意味がわからない。そんなものあるはずにない。

 まず頭を整理しよう。

 

 気がつくと周りが草っ原で、近くにあった城までの道を歩いてきたな。そこまでは大丈夫、理解出来た。

 次に、大きな剣を持った男性に話しかけて、ここはリファエルという都市であることを教えてもらったね。

 わかる、わかるんだけど…

 問題はその次だ。

 魔獣が急増している? なにそれ?!

 見たことも聞いたこともない話なんだけど?!

 

 さっきから一体どうなっているんだろう……??

 明らかおかしいことが起きすぎている。

 まるで世界が"生まれ変わった"みたい。



 とりあえずもっと今の状況を知るしかない。

 

 

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