僕はこの世界で死について考える。

みかみ

プロローグ


「疲れた……やっと授業が終わった……」

 今日の授業が一通り終わり、やっと一息ついたのでつい言葉が出てしまった。

 にしても、今日は異様に時間が長く感じる。

 

 何故だろうか?

 特に地獄のような予定でもない。

 だが、いつもの何倍も長く、とてつもない時間を過ごしているように感じる。


 なんてことをふと考えていると、クラスメイトがやってきた。

「夢咲〜今日補習あるんだってよ〜

 ほんとだりぃよな〜」


 正直、全くその通りだ。

 出来れば受けたくないし、自宅に直行したいところなんだけど。

 受けなくちゃいけないのが悲しい現実ってやつなのかもしれない。


「はぁ……今日もついてないな……」

ほんとに毎日がしんどい。だるい。

 

 勉強もそこまで得意では無いし、学年でも中間辺りの順位がふつう。

 上位を取るなんて夢のまた夢。

 かといって運動が飛び抜けている訳でもない。

 クラスで平均的な部類に入るレベルだと思う。

 容姿などもかっこいいわけじゃない。

 体格、容姿ともに普通の人間という感じだ。

 

 いわゆる凡人?無才?ってやつなのか。

 僕は昔からそうだった。

 幼稚園の時もそこまで目立っていたわけでもなく、誰の目にもつかないようないたって『普通』の人間だった。

 中心人物でもなく、何かすごいものを持っている訳でもない。

 言ってしまえばモブのような人間だった。

 誰の目にもつかず、恨まれず、好かれず、そんな生活を送っていた。

 今の生活もその延長線上だった。


 何かが変化するのがとても怖い。

 そんな生活を今日も繰り返している。

 

 さ、補習を受けてすぐに帰ろう。

 受けたくなくても、ぐずぐずしてる暇はない。

『人生には限りがある』

 早く終わらせて、真っ先に家に帰るのが大事なんだ。

そう思いながら、僕は席を離れた。



 ―――――――――――――――――――――

 そうして僕は補習を受けて帰路に着いていた。

 

「なんか今日はいつもより冴えないんだよな〜」

 そんな小言を1人寂しく言いながら、僕は家に向かっていた。


 帰る時は基本一人で帰っている。

 一緒に帰るような友達はほとんど居ない。

友達は居ても、帰る方面が少し違ったりする。

 僕の家自体があまり賑わっている場所にあるのではなく、まさに郊外?というにふさわしい場所にある。


 人もそこまで多くはなく、帰る時間帯にはほとんど人は居ない。

それだけならまだマシだ。

 もっと酷いのは、街路灯も壊れかけているというか、光っていないところがある。


 正直、僕はホラーゲームでもさせられているのでは無いかと思うレベル。

 こんな薄暗くて、街路灯が消えかかっていて、人通りも少ない場所……。


 こんなに気味が悪いものだから、自然と足早になっていく。

 怖いし、早く帰りたいし。


 そんなことを考えて歩いていると、一瞬視界が真っ暗になった。

「うわっ?!」

びっくりして思わず立ち止まり、声を出してしまった。

 一瞬気が動転したが、なんとか気を取り直した。

 今のはなんだったんだろう。


 周りには何もない。


「疲れているのかな……」

 そうだ。きっとそうだろう。

 僕は疲れているのだろう。


 毎日生きているだけでもハードワークなんだ。

 偉いと褒めてくれても構わないくらいに。

 みんな頑張りすぎなんだ。ちょっとくらい自分を甘やかしてもいいんじゃないか、と思う。

 

 帰って早く寝よう。

 視界が真っ暗になるなんて、かなりの重症だ。

 寝て起きたら疲労も吹き飛んでいるに違いない。


 そうして僕は小走りになりながら、家へと向かった。

 すると次は、フワッと身体が浮いた気がした。


 ダメだ。僕は本当にダメかもしれない。

 疲れすぎて、身体の感覚がおかしくなっているのかな。

 僕にはキツすぎる毎日らしい。


 やばい、早く帰らなくちゃ。

 こんなところで倒れたらたまったもんじゃない。

 誰も救急車なんて呼ばないだろう。

 誰にも気づかれないまま、その場で死んでしまう。


 そんなことを考えていると、次は地面が真っ黒になり、ついに身体に力が入らなくなってきた。

 例えるならば、ブラックホールに立っているような感じだ。


 僕はその場に思わず倒れ込んでしまった。


 ついに幻覚まで見始め、身体の力が入らなくなってしまったのだろうか。

 とうとう命が危ないのかもしれない。

 だけど、幻覚にしては妙にリアルだし、視界も感覚も、同じタイミングで押し寄せている。


 ――変だ。何かが変だ。

 

 すると、どんどん黒いブラックホールのようなものに飲み込まれていった。


 (?!)

 パニックになっていた。

 焦りに焦りまくっていた。

 

(やばい……誰か……助けっ……)

と言っても声が出ない。

 苦しい、辛い、その集大成のような感覚だった。


 

 そうして、僕はブラックホールのようなものに飲み込まれ、意識を失った――。

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