第69話

何度か冴島からの視線を感じたけど、知らない振りをした。


近づいてくることもあったけど、はしゃいで話題をふって空騒ぎすれば奴は何も言えなくなって…。



そのうちに諦めてくれたのか、深刻そうな顔で寄ってくることは無くなった。



おじ様方に煽てられて浴びるように酒を呑む冴島。


そのうちにへらへらと笑いながら、言語も怪しくなった奴は利川さんと一緒にかまくらで寝ることになった。



わたしは利川さんの奥様と一緒。


”こんな事になってすみません”


そう謝ったら、どっちみち一人で寝るはずだったから気にしないでと言ってくれた。



「洋はねいつも友達優先で、私は2番目なの。だから今日も侘しく一人きりで過ごすと思っていたから、果歩ちゃんが居てくれてよかった」


「そうなんですか?そんな風に見えませんでしたけど」


「私がね、小さな頃から好きだ好きだって鬱陶しいから、お情けで結婚してくれたのよ」


ええ?そうなんだろうか?


利川さんに奥さんですって自慢げに紹介されたから、亜子さんの言葉が信じがたい。


しかもさ・・・言っちゃあ悪いけど、亜子さんが美人だから、人並みに見える利川さんとはどう見ても、釣り合わない―――って思ったら怒られそうだけど、



どう見ても、利川さんの方が猛アタックしたイメージがあった。

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