07.永遠の友達

第68話

「あ!いた!大丈夫ですかー!!おーい!いたいた!こっち!」


スタッフらしき人達がゾロゾロとやって来てちょっとした騒ぎになってしまった。



急いで涙を拭く私。

面倒なことになってしまったら大変だと思ったから。



ここが暗くてよかった。



「イヤー良かった。かまくら見ても居なかったから焦りました」



その言葉に、冷静さを取り戻している冴島が聞き返した。



「あれ、決まった時間に点呼取れればいいんじゃないでしたっけ?」


「ああ、うん、そうなんだけどさ、兄貴に聞いてたから君たちのこと」


「———あ、もしかして”利川”さんですか?」


「そう、利川洋一です。これから何かとお節介しますんで、よろしく」


「あ、はい。こちらこそお世話になります」


冴島はしっかりとした口調で話してた。



雲が晴れて月光が差しかかったので、利川さんの顔色がよく見えた。


私たちの顔を交互に見ている。


こちらが見えるということは、利川さんもよく見えるってことだ。



「—————大丈夫なんだよね?」



わたしに問い掛けられる言葉。


きっと涙跡が見えたのかもしれない。



「はい――――大丈夫です。月があまりに綺麗だったので」


「そうか―――。じゃあ、楽しいイベントに戻ろうね。せっかく来たんだから、楽しく帰ってよ?」


「はい――」


「彩人君だよね?———きみ、いける口なんだって?」


「ああ、ハイ―――まあ・・・」


「じゃあ、おじさんたちと呑み明かそうか!彼女さんもね?———疲れたらうちの嫁とかまくらで寝たらいいよ」


「はい・・・お気遣いいただきありがとうございます」



きっと、何かを感じて私たちを一緒にしないでおこうと思ったのかもしれない。



その後、夜食とばかりに温かいシャケ鍋や甘酒をもらいながら体を温めた。



利川さんたちの知り合いも交じって手持ち花火や酒盛りをしながら夜が更けていく。


”ホッキ”って呼ばれる貝をバター醤油焼きにしたり、毛ガニそっくりだけど種類の違う”くりがに”を網焼きにして食べたり。


すごく良くしてくれたし楽しかった。



あのまま、冴島と気まずくなってしまうと思ってたから、余計に。



”あのさ――俺・・・”



何を言いたかったのかは分からない。


でも、あまり聞きたくなかったから、この状況がありがたかった。

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