第67話

「なんで、泣きそうな顔してるの?」


「———わかんない、———ってか、なんでそっちもそんな顔してるの?」


「え?」


わたしたちは二人とも泣きそうな顔をしていた。


キスした後とは到底思えない、戸惑いの顔。



「泣いてんの?」


「———泣いてない」


「……………」



今度は私のうちわを取り私を下から照らす。


「———やっぱり、泣いてんじゃん」



気がつけばわたしの目頭が熱くなってきて、ヤバいと思った時はもう遅く。


それがぽたぽたと防寒着の上に落ちていった。


明かりが少なくても見えてしまう感情。


こいつにとって私がとった行動は、戸惑い、困惑とかの類の感情。


すなわち迷惑だったんだと思い至る。



「——————あのさ、俺―――」


”彼女いるんだけど?”



そういわれると身構えてたけど、第三者の声によって幸いにも遮られた。

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