第64話

ぐびぐびと呑んだらすぐになくなって、身体がポカポカとしてきた。



フワフワと気持ちよくなってきた私は、口から言葉が滑るようにでてくる。




「ねえ、月がもし出たらさぁ――――キスしてみない?」


「————え?————は?———キス?」



凄く慌ててる冴島を横目に見て笑ってしまった。



「いいじゃん、イヤ?誰も見てないよ?————もちろん気持ちなんて込めなくてもいいし。———今回の旅行の記念に、ね?———最高の友達って気持ちを忘れないように思い出作ろうよ」



こんなこと普段言えないのに言えてしまうのは、ほのかに入ってるアルコールのせいかも。



でも、いつもみたいな恥じらいは無かった。




ただ、素直に思っただけ。



こんな浮世離れした世界に取り残された空間で



月明かりを浴びながらこいつとキスがしてみたいって。



ファーストキスは好きな人とがいい。



この後、誰かと付き合ったり、結婚したりするだろうけど


初めてのキスだけは、どうしてもこいつとしたい。



酔っ払いの戯言だと思って願いを叶えてよ。



――――それで、私は救われるんだから。

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