第62話

思いつたら即実行。


わたしの反対意見は軽くあしらわれ無視。


いつものように振り回される。


そもそも会場から離れて大丈夫なんだろうか?


手渡されるお揃いのそれを受け取りスイッチを入れたらカチカチ鳴るだけで電気がつかなかった。



「だめじゃん」


「あ―……はいはい、まだ魔法かけてないからだ」


なんだよその子供対応。

思わず笑いが漏れたら、つられて笑ってる。


その顔を見てドクンと鼓動が早くなる。


かっこつけなくたって十分に自然体でもカッコいいのに、彼女の前で封印するなんてね。


なんてもったいない



「よっしゃ、目が慣れてきた。行くぞ」


「ちょ、暗くてよく見えないって、————冴島?本当に前にいる?」


「居るよ、大丈夫」



何だか優しい声。

酔ってるから?



「………真っ暗って怖いね」



そう言った途端、近くに影ができたと思ったら、手をつないできた。


「これでいい?」

「え?え?ちょっと、なに」

「暗くて怖いんだろ?」

「いや、そうだけど、さぁ」



初めて好きになった人と繋がれる手に、情けないくらい動揺するわたし。


人のものだって分かってるけど、手袋越しだし、つなぐってより引っ張られてるに近い。


よって、わたしの中ではこれは不可抵抗力的で回避が不可能。


自然災害ってカテゴリーに入れることにした。



彼女さんに悪いなと思いつつも、ほんのちょっとだけ優越感に浸る私は、ここに居ない彼女に浮気じゃないよと言い訳をしていた。



本当に会ったらそんなこと言えないけど。

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