第50話
フリーに使えるバーベキュースペースはドラム缶を半分に切って足を溶接したものがズラーッと並んでいた。
薄暗くなった時間帯。
夕食や宴が始まって来たこの一帯は、空きがないくらいびっしりと埋まっていた。
「あ、あそこ三人家族っぽいから相席させてもらえるか聞いてくる」
「あ、うん。…ありがと」
その中でもあざとく隙間を見つけては即行動に出る冴島。
普段のほほんとしてるし、この旅行だって行き当たりばったりだけど、こういう時、意外にも頼もしかったりするんだ…。
初めて知った。
「いいって」
「ほんと!ラッキーだったね」
「おう、寒いから腐りはしねーだろうけど、宴会始まってるっぽいから長そうだよな」
改めてお礼を言って、半分貸してもらった。
「お邪魔して本当にすみません、ありがとうございます」
「いーのいーの、三人でこの大きなコンロ独占してるみたいで悪いなって思ってたから、逆に助かりました」
「そうそう、これで気兼ねなくすごせるわ~」
40代くらいに見えるご夫婦は揃ってそんなことを言ってくれた。
それだけでもありがたいのに、食材しかない私たちに、調味器具や調味料やタレとを自由に使いなさいって言ってくれる。
その他にも焼き魚やうどんや焼きそばなんかも一緒にって取り皿にわけてくれた。
「イヤー本当に、すみませんっっ!」
「いーのいーの、帰りの荷物が減ったほうがいいから」
小6の息子さんをはじめ、一家でアウトドアが好きみたいで、初心者の私たちは何から何までお世話になってしまった。
「ステーキはね、両面をこんがり焼いたら、ホイルに包んで中に火を通すんだよ。新鮮な牛だから、中が赤くても食べれるからね。こっちの豚や鳥はちゃんと火を通さないと”あたる(食中毒)”からね」
「そうなんですね~、ありがとうございます!!」
料理が好きだからある程度は知っていたけど、丁寧に教えてくれる気持ちが嬉しかった。
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