第49話

「———泣きむし果歩ちゃん、飯食べようか」


泣いてしまったからなのか、チャン付けで私のことを呼ぶ冴島について行った。









フードコーナーに王道なものが売られている中で、私たちが気になったのは”シバレ焼き”たるもの。



お店の人に聞いたら、”シバレ”とは北海道の方言で”凍る”とか”寒い”とかの意味らしい。



そういえば、行きかう人の中に「いやー、シバレるな」なんて言っている人がいた。



寒い(シバレる)中で食べる焼肉だから、【シバレ焼き】



わたしはそれに対しては反応薄だったけど、冴島が必要以上に詳しく聞いていた。



テンションが下がってしまった私に気を使ってるようにも見える。



そうして、お店のおばさんに気に入られて、ホカホカおにぎりやステーキ肉一枚をオマケしてもらった。



「冴島って結構そういうのもってるよね」


「んん―――そうかも。…なんでだろうな」



冴島はそんなことが多い。



レトロな駄菓子屋を見つけては、そこのおばあちゃんに気に入られてラムネをもらったりだとか


これまたボロイけど美味しいオムライスが食べられる店に一緒にいって美味いって連呼してたら、気の良くした店主から注文してない唐揚げもサービスしてもらったことがある。



わたしには何となくその理由がわかる。


一見冷たい印象があるのに、話してみると意外なほど人懐っこい。


そうして、嬉しそうに話を聞いてくれるからだ。



それでママにもすぐ気に入られてたし。



だから、学校でのこいつはそういう部分を封印しているだけで、決して河内谷君の言うように、人間としてちょっと問題があるって訳じゃないんだ。



ただ、友達に無視される経験をしてから、新しく友達を作るのが面倒なんだと思う。

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