第47話

『腹減った、飯食おう』


冴島の一言で勝負は一時休戦。



フードコートに行く途中、少し道から外れた場所にまっさらな雪があった。



これを発見した私たちがやることはひとつしかない。






「いくぞ―――、せーのっ!」


「ちょちょちょ、ちょっと待った!」


「なんだよビビりだな」


「本当に大丈夫?倒れる風圧でフワッと雪が舞って何もなくなった地面に頭ゴツンしない?」


「しねーって、こんなに分厚いんだぞ?それにさんざん手で確認しただろうが」


「だけどさ、勇気いるって」



寸前になって背中から”雪バフン”が怖くなったビビりな私。


手で確認しつつも、手で押す力と体重をのっけて尚且つGがかかるだろう力は同じに思えない。


頭打って脳震とうになりそうで怖い。



「————・・・ったく。————ほら、いくぞ」



そんな私に見かねた冴島は、ため息交じりに私にピタリとくっついたと思ったら、首の後ろに腕を回してきた。


「え?——え?!」


「なんだよ、イヤか?これなら怖くねーだろ?」


「う、うん」



ヤバい、不意打ち過ぎて顔が赤くなる。


横並びだから気づかないと思うけど、なんか焦る。



「いくぞー、せーの!」



後ろに倒れる怖さを紛らわすように


そして、赤くなった顔にバレないようにとフードを深くかぶった。




背中には少しの衝撃と「ムギュ」っと出た雪がつぶれる音。


それと同時に私の頭を守るように、大きな手が私の頭を覆ってくれた。



ふわり



そんな表現がしっくりとくるような感触だった。


痛くも痒くもなく、倒れた衝撃の分、私たちは少しだけ雪に埋まっていた。



わたしはフードから手を放さず、夕焼け色に染まった丸い空を見ていた。



「————きれい」


「おお、すげーな・・・」



灰色な雲と裸の木しかない茜色の空。


人工的なものが何もない、まっさらな空に私たちは見惚れていた。


冴島の腕がゆっくりと抜かれていって、フード越しに雪の冷たさが伝わってくる。



「・・・・・・・」


「・・・・・・・」



それから無言になった私たち。



少し火照った頭に、雪の冷たさが気持ちよかった。

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