第44話

「まあまあ、落ち着いてあっちの方も見てみようぜ」


「う、うん。———べつに、動揺なんてしてないからねっっ。」


「はいはい、分かったって」



いやもう恥ずかしい。


経験の無い女がなに勝手に騒いでんだって思われたよね?絶対。



―――――彼女いるし・・・か。



さぞかし私は貧相に見えるだろうな。


一瞬しか見なかったけど、彼女さん綺麗だし可愛いもんね?



そらぁ、わたしとどうこうなんて気にはならないよね。



分かってるよ?———分かってるんです。



でもね、人間どんなに底辺でも希望ぐらい持ってもいいでしょ?



夢は大きくってやつですよ。




「ここ、今日の部屋」


「ん?————そっかぁ、ここかぁ――――――――――つって・・・・・え?冗談でしょ?」


「まじまじ」


「————あんた、頭おかしいんじゃないの?これ、雪のかまくらでしょ?」


「そう。でもエントリーしたから泊まれるの。しかも、ここが俺たちの部屋」


「ここが?————」



――――俺たちの部屋………か。



とっても素敵な言葉なんだよね。



言葉だけはね。



旅行中のカップルがホテルに着いた時とかさ、はたまた同棲とかが始まる合図でもあるしさ、新婚バージョンでもその言葉使うよね。



でも、不思議だなぁ―――――



どうして1ミリもときめかないんだろう?



そう、キュンってなるようなアレがない。



あるのはマジで!!!って驚きと絶望だけだ。



「ここのミッションは”雪バフン”じゃなかったの?」


「ああ、あとでやりに行こうな。あっちに新雪あるっぽいし」



奴が指さす方へ見れば、確かに手付かずっぽい綺麗な雪がある。



ただ、その前にある大きな看板の方が目に付いた。



【人間耐寒耐久テスト】



・・・・・ああ、いつか言ってた恐ろしい実験名は、この事でしたか・・・。

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