第43話

「あ?とってねーよ?一緒のとこだけど?」


「—————はぁああああああ?!!!」


「でっけ―声出すなよ、恥ずかしい」


「いやいやいや、ありえなくない?なんで?なんで一緒の部屋?」



これにはさすがに心臓が暴れだした。


それを誤魔化すように出てくる声は、異常なほどハリがある。



自分だって分かってる。


周囲の人が私たちを見てるって。


分かってるけど—―――焦る心はすぐには治らない。




だから、言葉が脳みそを通過しないまま出てきちゃう。





「ちょっと困るんですけど!あんたは何とも思ってなくてもね、———コッチだって心の準備が―――じゃなくて!あの、だから、年頃の男女が、いくら友達だからってさ、間違いがなくもなくないというか・・・あ、あたしは!そんなこと思わないけど!———だからその!これは」



まとまりがなくて、何を話したいのか自分でも意味不明。


一番伝えたいことは、”なんで一緒の部屋?”って議題だったのに、いつの間にか”私はあんたのことを何とも思っていない”っていう、冴島にとってはとてもどうでもいい情報にすり替わっていく。


――――――何言ってるんだ、わたし。


マヌケすぎる。


そう思ったのは私だけではないみたいで、慌てふためく私を見ていた冴島は、肩を小刻みに震えさせて遂には声を上げて笑い出した。



「—————ぶっ!ククククっ、アハハハ――――」


「な、なにを笑ってるのよ!」


「そんなに焦んなくても、間違いなんて起こんねーから。おれ彼女いるし」


「————そ、そうですかっっ」



全く腹立つ。


冷静に否定するなよ、0.0001%だけでもあるのかなって思った可能性を。

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