05.ドキドキ?

第41話

「なあ?」


「うん?」


「こんなに何もないとさ、不安になったりしねーのかな?」


「えー?…どうだろうねぇ?心はまっすぐ素直に育ちそうだけど」


「そんなわけねーから。どこにでも”悪”は存在するんだよ」


「えー?本当かなぁ?———そんな事あったら、夢の国みたいなテーマパークに凶悪犯が紛れ込むくらいショックなんだけど」


「なんだよその例え。相変わらず脳内お花畑だな。人間は足りないものを見つけては不平を洩らす生き物だろうが」



また出た。ひん曲がった思想。


こんなにのどかな土地で生まれ育って、それは無いと思いたいのに、私の思考はお花畑らしい。



「まあ、それが果歩らしいけどね」



あ、また名前呼び。


急にどうしたっていうんだよ。


名前で呼ぶって事はだね、普通じゃないでしょ?



いったいこいつは、なにを考えてるのかが全然分かんない。




特急を降りて、北に向かうべく乗り換えて、最寄り駅らしいところで降りると、マイナス17°って表示されてる電光掲示板があった。


「うわっ!!!さぶ!」


「うお、マジでかっ。」



わたしと冴島は急いで現地で調達した防寒着のフードをかぶり顔半分を隠した。


それで頬も覆われるし、自分の呼吸の熱が蓄積されていくように温かい。


防寒着の中も何枚も厚着をして来いって言われた意味をここで知る。



特急列車の中は暑いなと思ってたけど、今になって役に立ってきた。


でも、着ぶくれしてる見た目と、顔半分隠れてる自分の姿がガラス越しに見えた。


快適になったけど…。見た目は—――だいぶダサいかも…。



目の前の色男は—―――そんなことないけど。



口元隠れてもカッコいいって異常じゃない?


ちょっと悪役ヒーロみたいでさ、すっごい似合ってるんですけど・・・。


この差はなんなの?


カッコいいって、無駄にムカつく。



「これさ、あってるのかな?」


周りの視線が集まってる気がする。


地元民からみたら大げさだったりするのかも。


それとも目の前のこいつに視線が集まってるだけ?



「あってても間違っててもどっちでもいいじゃん。この寒さにはこれが正解だって」


「———まあ、そうだね。強がってもどうしようもないよね」



目的地までのシャトルバスが通っているらしくそれに乗り込んだ。



段々と見えてくるのは、雪で作られた像みたいなもの。



「え、もしかして冬まつり?」


「うん、まあそう」


「えー!凄い!こゆうのって札幌とかじゃないの?!」


「北海道は市町村ごとにあるらしいよ?規模がそれぞれ違うけど」


「へーぇ、ここは大きく見えるね!」



始めてくる冬の北海道。


もちろんこんな類のイベントなんて来たことない。


だから遠くに見えているだけでもワクワクしてた。

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