第38話

満面の笑みで渡されるおもちゃは、ハズレくじでもらうようなものだった。


小さな頃に行った花火大会で、大きなおもちゃが欲しかった私はくじをしたいと両親にせびり、見事に全部外れて大泣きした。



わたしのことを一生懸命に宥めてくれた両親。


あのころ、私たちは家族だった。



いつから家族じゃなくなったんだろうな…。


今じゃお父さんには新しい家族が出来て、お母さんも彼氏がいるっぽい雰囲気。



出張なんて嘘だろうな。


きっと、彼氏と旅行に行ったんだと思う。



”大丈夫、ちゃんと進学させる目途はついてるから。それでさ、パーっと憂さ晴らしにでも使って?”


ねえ、ママ?


それってさ、そういう事?



もし、新しいパパが―――とか、ましてやその人に学費出してもらうとか?



もし、そうだったら、—————なんか、嫌だな。




「・・・どうした?」


「あ、うん?」


思考が飛んで、この状況忘れてた


「おもちゃ、いらない?」


「————いる」



わたしが受け取るのが意外だったのか、一瞬〖⁉〗ってなってたけど、ほいって渡してくれた。



だって、そりゃねぇ、———うれしいですよ、はい。



―――お揃い・・・だもんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る