04.突然の訪問者

第32話

冴島を見かけるのは一日にあるかないか。


そんな状態が半月続いたある日。



冴島がインフルにかかって学校を休んでいるって噂がたった。



修学旅行の2日前。


これは旅行キャンセルだなと思った5日後、あいつはひょっこりと現れた。








「何?インフルじゃなかったの?」


「インフル?誰が?」


「あんたが」


「いーや、ピンピンしてるけど?」


「だね。・・・ってかさ、行かなかったの?修学旅行」


「行かねーっつったじゃん」


「なんで?」


「なんでって・・・。」



とりあえず行くぞと私のスーツケースに手をかける。


それについていくしか出来ない私は、他に選択肢などない。


正直何が何だか意味が分かってなくてプチパニックだ。



まず、一つずつ順を追って整理していこう。


週末までの3日間、人数の少ない教室に行き、きっちりと授業に出席した私。


修学旅行に行かない組のいつもの面々は半分もいなかった。


河内谷くんや、その取り巻きたちも。



明日から休みだなとか思いながら、侘しく学校から帰った後に言われたこと。



「ママ、明日から出張だから」


「しゅっ…………ちょう?」



今までママから聞いたこともない単語。



ホテルのフロントで働いてるママ。


特に社員でもないしパート扱いなのに”出張”ってあるんだっけ?



「どこに何日間?」


「福岡に3日間」


「————そう、行ってらっしゃい。———スーツケース二個も持ってくの?」


「何言ってるの、一つはあなたのよ」


「は?———私も行くの?ママと一緒に?」


留守番出来るよと言いかけた私に、意外な名前が出てきた。

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