第28話

強く掴んでくる握力とは反するように、悲しい表情をしていた。



なんで、あんたがそんな顔するんだよ。



こっちが悪いことしてるみたいじゃん・・・・



それに、



ズルいよ。



…………ズルい




私は普段からあんたへの恋心を悟られないように努力してるのに、お前は彼女が居る分際で感情むき出しか。



彼女への筋を通してやるのが彼氏でしょ?


お前にとって私はそんな表情を見せていい相手じゃないはずだ。


気持ちフラフラさせてそんな顔を私に見せるなよ、ムカつく。


もしかしたら――――とか、バカげた考えが浮かぶじゃん。





「———ふざけんな!このノー天気野郎!放せ!」



思わず叫んだ声にビクついて冴島は手を放した。



「ハァハァ………」



目の前の男を睨み上げる。



―――河内谷くんもムカつくけど、こいつの非じゃない。



こいつの身勝手さが異様にムカついてきて、今は顔も見たくない。



『洗脳されてるじゃん』



違う、私は—――そんなんじゃない!

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