第23話

そのあとじゃあねと言いつつ席を離れていった彼。


名前も知らないまま行ってしまった。



帰って行った場所には友達でもいるのか、少しだけ弾んだ声が聞こえてきた。



”よく行ったな―”

”スゲーじゃん”


的な声が聞こえてきて、なんとなく察した。



罰ゲームだったのかも。


何かしらで負けて、普段ポツンとしてる私に声かけて来い的な?




そう思ったら男ってどうしようもない生き物なんだなって飽きれてきた。


冴島以外にも話が出来る人が出来たと思ったのに…。



やっぱ、このまま三年のクラス替えか、もしかしたら卒業するまでこのままかもなって思えてきた。



それくらい、あの男の側に居るっていうのはリスキーなんだなと改めて実感する。



好きなんだかどうなんか知らんけど、周りの女子から小さな嫌がらせみたいなものもあるし。



チャイムが鳴って、椅子を片付ける。



そこから何となく待って一番最後に出ることにした。



彼らの視界に下手に入って、後ろから悪口言われても嫌だし。



って思ったのに出たと同時に声がした。



「ねえ、昼休み抜けない?」


「わ、びっくりした。———さっきの?・・・えーっと…」



さっき隣に座った彼だって分かるんだけど、名前がやっぱり出てこなかった。


見たことはある、何か部活もやってたとおもう・・・。


運動神経がよくて体育祭の時、みんなにすげーなとか言われてた印象があるから。




でも全然名前の一文字も出てこなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る