第5話

「だってなに?」

「・・・なんでもない」


「なにそれ?・・・ハァ―――…どうするよ、これ」




考えに考えて、キッチンの三口コンロに大き目な鍋で具材を投入して火をかけ、その前に椅子を並べて箸と小鉢を構える羽目になった。



「シュールやな・・・」

「ね、せめてポータブルのガスコンロがあったらね」


「ん、だな」

「あ、ふいてきたきた。もういいね」


蓋を開ければ食欲そそる匂いが立ち込めてきて、二人の口からそれなりの歓声が出てきた。



「しかしまぁ…散々な鍋デビューだな俺たち」

「これは普通のアルミ鍋だから正式には鍋デビュー果たしてないよ私たち。ん?土鍋あるのにやったことないの?」

「土鍋じゃねーもん、焼き肉も出来るまあるい電気釜だよ」

「ああ、あれか」


話しながら二人お互いにレンゲで好きな具材を入れていった。


「お互いシングル親の一人っ子じゃあ、鍋とかしないよね」

「そうそう、焼き肉は食いてーからするけどな」

「あ、そう言えば、お金は?レシート見せて。」

「ああ、500円でいい」

「何言ってんの、こんなに買ってきて絶対違うでしょ?これで合わせて1000円はないよ?」



剥き牡蠣やベビーホタテだけでも結構するはずだ。

その他に海老やサケまで買ってきてくれた。


「いいの、場所借りてるし俺が言い出したから。次の時はきっちり割り勘って事で」

「えー、なんか悪いよ」

「いいの、俺の金じゃねーし」


そんなの言われたら尚更悪い気がするけど、あまりしつこく言って嫌われたらいやだから、止まり木は素直に承諾いたします。


「ありがと」

「ん」

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