第75話

『ピンポーン』


不意になったインターフォンの音に皆の動きが止まる。



時計を見れば夜も大分更けてきた時間だった。


母親とすき焼きを食べ終わって、そろそろいい加減に帰れとか言おうかと思ってた時に鳴ったのだ。



「・・・・・誰かな?」

「乙葉、俺がでるよ」



きょうは誰も来る予定がない。


宅配便が来るには遅すぎる時間だ。


インターフォンの画面を凝視する。



もしかして・・・・と思う不安が的中した。


画面をOFFにして玄関へと急ぐ。

侵入されないようにチェーンをかけてから玄関扉を開けたら、少しの隙間から顔をずいっと入れてきた。


ニタニタ笑ってるその表情はもはやホラーでしかない。





「えへへ、来ちゃった」


「・・・・帰れ、帰ってくれ!」



自分でも驚くくらい大きな声が出た。



「イタタタ、頭押さないで、首が痛い。どうして?電話じゃあんなに優しいのに・・・そんな怖い顔しないでよ」


突然の訪問者は由香里だった。


乙葉に彼女を見せたくなかった。


由香里はいつしかの面影はあれど、着ている服が薄汚い恰好をしていた。


接近禁止になっていることを忘れてしまったのだろうか?


愛想笑いを浮かべながらとりつくろう彼女の神経が分からない。

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