第74話
俺はこんな感じなのだけど、乙葉は母親と気が合うみたいだった。
時々アポなしで訪問しては下手くそな手料理を置いて行く。
掃除や洗濯も手伝っているけど、はっきり言って俺一人に任せてくれた方が乙葉の身体が休まる。
見かねた俺が怒ろうとすれば乙葉に止められていた。
彼女は母親の気遣いが嬉しいから迷惑していないと言う。
俺の母は俺同様に行動が似ていて、可愛くて癒されるとのこと。
母親の歴代の彼氏たちが恋に落ちる気持ちがよく分かるのだそうだ。
俺は過去の出来事があるからそんな風に思えないけど、乙葉が心休まるというのなら致し方ない。
「うわ、すき焼き?」
「キャ~!凄い!」
「そうよ~~。あんたが私の作るご飯に文句つけるから、今日は間違いのないやつにしてきたわよ」
「そうなんだ。これだったら毎日でもいいよ?」
「ばかおっしゃいなさい。今日は”特別”なの。今度は自慢の一品持ってきますから」
母は今日が何の日か覚えてたみたいだ。
乙葉は知らないからいいけど、わざわざそんな事言うなよとひと睨みする。
「ヒロ君?すき焼き鍋出して?」
「うん」
きょうは蓮人の誕生日。
俺が人生で初めて”父親”になった日。
目の前の母親は初めて”ばあば”になった日だった。
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