第51話

付き合いは順調だった。


といっても今までのような関係が続いていただけで、恋人らしいことはしばらくなかったけど。



メールは今まで通り、いつもの日常を報告し合うだけだったし、休みの日もゲーセンやパチンコ通いが主なパターンだった。



唯一、今までと違うのは手を繋いで歩いたり、別れ際にあてるだけのキスをするくらい。


どちらも俺から始めたことだった。

いままで自分から女性にこんな事をしたことがなかったけど、乙葉が照れて顔を真っ赤にするからその可愛い反応が見たかったんだ。



自然と手を紡いだり、お互いの心に触れられた時にキスするようになったころ、俺は結婚歴があったことを彼女に話した。



事後報告のような形になってしまったけど、由香里のこと、蓮人のことを包み隠さずに打ち明けた。


本当は付き合う前に話さないといけない事だけど、何故かこの人なら大丈夫だという自信があった。


偏った見方で物事を判断しないし、感情オンリーで人格を決めつける人でもなかったからだ。



例えばパチンコにはまって自己破産する奴。


俺は自業自得しか思えないし、通っている時も周りの人達をよく思っていなかった。



でも乙葉は考え方が少し違った。


どこにも居場所がない人たちがほんの少しでも心の安らぎになれるならばと、やたらと長いリーチを機種に盛り込み、使い込みを防止するような提案をして動いてきたチームの一員だったんだ。


ギャンブルが好きで通っている人は確かにいるが、狭い空間で一人になりたかった俺のような人が他にもいることを気づかせてくれたんだ。

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