第42話

「――――晩飯食った?腹空かない」


「うん?」


「今日、いろいろ教えてくれたから飯奢るよ」


「ええ~いいよぉ。そのお金は次の軍資金にしなよ」


「いいって、美味しいところあるんだ、行こうよ。飯だけだから警戒しないで?」


「ぶっはは!警戒なんてしてないよ。あなたみたいにカッコいい人とどうこうなろうとか夢見る年頃でもないし。まあ、今日の追加の補習としてならごはん行ってもいいよ。その代わりおごりはなしで」



なんか、男っぽくてサバサバとしている女性だった。


確変の事を教えてくれるあたり、正義感を持ち合わせている人なのだろう。



彼女を連れ出したのは普段接待で使っている居酒屋にした。


個室は警戒されるからテーブル席を選ぶ。


大衆居酒屋みたいに席が近いわけでもないから、それぞれのプライベートは保てる距離が確保されていてちょうどいい店内。



「初めて来たけど、いいねこの店」

「うん、酒も珍しいのあるし、肴も旨いよ。お姉さん呑めそうだよね」

「ええ~、見た目で分かるんだ?」

「そういうような仕事してるから」

「まさか、精神科のお医者様とか?」

「それはない」

「そうだよね、あなたみたいな色男が先生だったらみんな患者になりそうだもんね」

「バッカなこと言ってないで、どの辺りにする?」



眠気なんてもう吹っ飛んでいた。


なんか異性に対してこうもリラックスして話せるのが心地よかった。


初対面だというのに、長年付き合ってきた友達のような感覚かな?



まあなんとも不思議な魅力のある人との出会いだった。

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