第41話

「さっき、偶数の数字が三つ揃って大当たりしたでしょう?」

「うん」

「そうしたらね”確率変動モード”に入るの」

「はあ・・もーど・・」

「それでね、ココ見て、この機種は1/367の確率って書いてるでしょ?」

「・・・・はい」

「それが確変になったら1/50以下になる訳よ」

「へぇ」

「すなわち、待ってればすぐにアタリが来るって訳なの」

それは知らなかった…。


別に金が欲しいわけじゃないからどうでもいいんだけど。


・・・ああ、だから俺が帰るときに本当に帰るのか?って何度も確認してくるおじさんが居たわけだ。


じゃあそこに席移すとか嬉しそうにしていたのは、そう言う訳があったのか。


・・・・じゃあ、このひと

黙ってれば得をするはずなのに、勿体ない事をするよな。



その人はその後も席を隣に移していろいろと教えてくれた。


このリーチは長いから玉を止めたほうがいいとか、普段は外れるようなリーチで確定したから高設定だの…。


眠たいから帰りたいと思っていたけど、パチ好き女の授業が終わらないから閉店まで付き合わされた。


途中、帰ろうと思えばそうできたはずなのに、そうしなかった。


アタリが出るたびに大喜びしている彼女を見ているのが楽しかったんだ。


自分のことのように手を叩いたりして喜ぶから、その表情をずっと見ていたくなった。


相手側からこうやって純粋に笑いかけられるのはいつぶりだろうか?


いつも申し訳なさそうな、心配してそうな表情ばかり向けられていたから。




「すっごーい!いちぱちで3万の換金は凄いよ!夜からでしょ?元手いくら?」


「・・・500円」


「え!本当に?ありえないくらい凄いんですけど!」



彼女の無邪気な声が駐車場内に響く。


ああ、なんかこの子の笑顔を見るとホッとする。

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