第34話

一方的に電話を切るけど、すぐになるコール。


紅い電話マークを長押しして携帯の電源を切った。




「鍋島からは盗撮及び名誉棄損で訴えると返事がきましたが、婚約者の方に同じ書類を送ると言ったら取り下げました。そこまで知られているとは知らなかったのでしょうね」


「そうですか・・・」


「こちらの要求に全て応じるそうなので、後日ここの事務所にて示談書に署名捺印してもらいます。あと、由香里さんもごねていましたが両親から縁を切られることを条件に示談金を肩代わりしてもらうようです。親と縁が切れるというのに、鍋島との結婚のためにと離婚届けに悠々と記入してもらいました。示談書やその他諸々にサインすることも了承済みです」


「そうですか」


封筒に入った離婚届を受け取る。


なんだか手に取ると気が重くなる気がした。


「離婚に応じる条件として、由香里さんは蓮人君だけは手放さないとおっしゃっていますが、どうされますか?」


「――――もともと、僕は血縁関係にありませんから」



DNA鑑定は鍋島家の方ですでにしていた。


当たり前のように鍋島の子で間違いがないとのことだったらしい。


わざわざそのことを伝えて、蓮人は自分たちが引き取ると、そこだけは強気だった。

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