4、煙草のけむり

第32話

「まずは内容証明を作成し相手側に送ります。その後、相手が応じるようなら示談交渉をしましょう。応じない場合、最終的には裁判になりますがこれだけの証拠があるから問題はないでしょう。内容的にこれを法廷で晒すことになりますから、間違いなく示談に応じると思いますよ。それに、鍋島達樹の”婚約相手”に由香里さんとの二股関係がバレると白紙になりかねないので、争いごとは避けるでしょうね」


「でも、清原の人間は不思議に思わないのですか?なぜ子供がいることを黙っていたのか?とか、変に思わないですかね?」


「鍋島の人間がどうとでも言えるでしょう。親戚の子を預かって養子にするための手続きしてるとか、前に付き合っていた彼女が身籠って行方をくらまたけど、亡くなってしまって引き取った、とか」


「そんなの、信じますかね?」


「まあ、それはこちらには関係のない事です。でも、親権はどうしますか?三者同意のもとでのDNA鑑定は避けられないでしょうが、あなたに全く可能性がないわけでもありませんよ?」


後々に親権を取ったとして、蓮人との生活を考えてみる。



今までのようには仕事ができなくなるだろう。


母子には手厚い手当がついたり、保育所への入園も優先的になるが父子には手厳しい世の中だ。



俺に兄弟がいたり、両親が揃っていたり、専業主婦な母親がいれば状況が変わるかも知れないが、どれも揃っていない。



ああ、一番にこんな事を考えてしまう俺は、もう蓮人の父親失格なのだろう。


「――――いま、無理矢理答えを出さなくてもいいですよ。まずは相手が真実を知って離婚をごねる前にそちらから済ませていきましょう」


「はい――――。宜しくお願いします」



色んな推測が頭を支配して思考や判断が鈍る。

もうどうでもいいから離婚してくれるだけでもいいって思っていた。


だから、彼らの協力を得なければ泣き寝入りするだけだっただろう。


細かな決め事を事前に話し合うことはとても大事なことだ。



それを実感するのはもう少し後の話になる。

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