第31話

例の女は、この辺では知らぬ者はいないほどの企業”清原グループ”の会長令嬢であった。


そうして正式なる鍋島達樹の婚約者でもある。



達樹と婚約者は結婚前にそれぞれ身体検査したらしいのだが、相手の女性側に妊娠が難しいことが分かったらしい。



兄妹もいなく一人娘であるがゆえに婿を取ろうかと考えていた両親だが、こうなると孫は望めなくなる。


それで鍋島との婚約が破棄になりかけていた。


それならば社員の中にいるシングルファーザーの中から婿をとり後の後継者へと繋げようと清原の人間は考えたらしい。


それを何とか阻止したい鍋島は、由香里と蓮人の存在を都合よく思い出したというわけだ。


由香里と一緒になるフリをして、蓮人の親権を鍋島家で取るという策略なのでは?と。


一部、興信所と弁護士の推測に過ぎないが、これだけの情報があればそう思うのが普通だろう。






鍋島は会社経営が上手くいっているかのように話を大きくして聞かせる。


月の給料は100万近くになるとか、大口がいくつも入っているから黙ってでも金が入ってくるだとか。



決してそのようなことはなく、婚約相手の会社と提携し援助してもらえなければ大変なことになるのは見えていた。



彼女はそんなことになってるとは知らず、そのでまかせ男とありもしない未来を夢見ているのだろう。



そんなことはまずあり得ないだろう。

間違いなく捨てられるんだ。

ざまぁみろとしかいいようがない。

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