第26話

昼間は取引先と打ち合わせして、夜は接待をする。


地元じゃないから下調べをして、相手が好きな酒や店の雰囲気を元に選んだ。


その後も、今までの話を参考にして、好きそうなバーを探し深夜近くまで相手の気分が良くなるように持ち上げる。


あまりあからさまでもいけないし、控えめなのもよくはない。


その微妙な加減は先輩たちからたたき込まれた。




相手をタクシーに乗せてホテルへと戻る。


それまではやることがいっぱいあったから、よけいな事を考えなくても済むけど、こうなると頭をかすめるのは奴らの事ばかり。



深夜一時。



今ごろ奴らは宜しくヤってるころだろうか?


それとも蓮を挟んであのベッドの上に寝ころびながら川の字で寝てる?


その光景は、さぞかし家族なんだろうな。


俺なんかより、もっとそう見えるのだろう。



そう考えると醒めてた筈の怒りがフラッシュバックしてくる。


俺は、なんてマヌケな結婚生活を送ってたんだろうと思えばまた泣けてきて、トイレに駆け込む。


 

俺にとってこんな地獄のような出張は後にも先にもこの時だけ。


早く由香里たちと縁を切りたくてしょうがなかった。

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